ラクトコーダの利用により、今まで計測することができなかった様々な搾乳のデータを容易に取得することが可能になります。乳房炎コントロールには、人の搾乳のやり方、ミルキングシステム、乳牛とその環境が関連しています。しかも、乳質を悪化させる要因には人の責任が大部分を占めています。
正しい搾乳手順を理解して実施してもらうことが重要です。しかしながら、適切な搾乳のやり方をしても、ミルカーに欠陥がある場合は、乳質の悪化につながるといえます。ラクトコーダによる乳検実施により、マッサージ不足、過搾乳、牛を興奮させたことによるアドレナリン放出によるストレスなどの人間による搾乳のエラーや、エア漏れ、真空発生機の排気量不足などの搾乳システムの欠陥を酪農家に指導・伝達することが可能になります。
ラクトプロで表示できる泌乳カーブより、視覚的な見た目による判定をおこなうことが可能ですが、データベース上から問題点を抽出するためにはグラフ情報をデータ項目化する必要があります。その結果として、極めて複雑な定義による評価パラメータが多く存在します。その中でも明確な評価パラメータとしては、過搾乳の時間、マッサージ不足によるバイモダリティ(デュアルピーク)の出現、主搾乳期の上昇期・ピーク維持期・下降期の構成、エア洩れの有無などのデータです。全ての項目を100%評価対象にすることは極めて困難ですが、項目の意味を理解することはラクトコーダ運用の意義を考えると重要であるといえます。
泌乳グラフはラクトコーダのセンサーで0.7秒ごとに計測された情報の4回分(2.8秒)の平均をイラスト化したものです。さらに、空気の含有量(泡の量)もグラフ化されます。
泌乳カーブの区分け
泌乳カーブは以下のステージで構成されます:
【測定のスタートフェーズ】
【主搾乳期】
【過搾乳期 1】
【マシンストリッピング期】
【過搾乳期 2】
付加的な項目として以下のデータも調査することができます。
【電気伝導度】
【その他の項目】
泌乳カーブの見方
■ tMGG
スタートボタンを押してからストップボタンを押すまでの時間。
■ MGG
測定のトータル乳量(検定で採用される実乳量)
【測定のスタートフェーズ】
スタートボタンを押すことにより測定が開始されます。この時点で既に流速と電気伝導度の計測が有効になりますが、実際に測定結果として記録される測定は乳の流れを感知してからです。具体的には、乳の流速が200g/分を超える状態が、3回の測定インターバル(3X2.8秒)で連続した場合に搾乳が開始されたと判断します。そして、それより30秒前の状態も記録として残ります。この時点でラクトコーダ本体は画面のバックライトが点灯させて、流速の表示を開始します。
■ tS500
計測を開始してから流速が0.5kg/分に達するまでの時間。(この場合の計測開始は、乳を感知した時点です。)
【主搾乳期】
泌乳カーブの見方
流速上昇期から、流速維持期を経て、流速下降期までの時間です。
■ tMGH
主搾乳期の搾乳時間
搾乳開始の判定基準:
搾乳の開始 = 0.50 kg/分 (tS500) から流速の下降が0.20 kg/分に達するまでの時間。
例外:
– 流速上昇期において0,20 kg/分以下の流速下降が認められた場合
– エア漏れによる流速低下が認められた場合
– 流速が0,20 kg/分以下になる前にマシンストリッピングがおこなわれた場合
■ tA
流速上昇期の時間: 主搾乳期を3つのパートに分割した期間のひとつで、流速
が 0.50 kg/分 に達してから、流速が停滞するまでの期間。
流速停滞の判断基準:
最初に乳を感知して搾乳の開始が認められから、最初の1.25分の期間において、単位時間(3回の測定インターバル=3×2.8秒=約9秒)に流速の上昇が0.8kg/分以下になった時点を停滞期の開始として判断します。
■ tPL
流速停滞期の時間: 流速停滞期の開始から流速下降期の開始までの時間。
流速下降の判断基準:
単位時間(3回の測定インターバル=3×2.8秒=約9秒)において、流速の上昇
もしくは下降が0.8kg/分以内である場合は停滞期が持続していると判断されま
す。単位時間の流速低下が0.8kg/分以上あり、さらには、低下の傾きが約15%
(tan0.85)以上になった場合に流速下降期に移行したと判断します。
■ tAN
流速上昇期の時間。
■ tAB
流速下降期の時間: 流速下降期の開始から、流速が 0.20 kg/分まで低下する
までの時間。
■ tAbD
流速停滞期から下降期への移行の判定時間。
■ tAnD
流速上昇期から停滞期への移行の判定時間。
■ MHG
主搾乳期における乳量の合計。
■ DMHG
主搾乳期の平均流速 kg/分
■ HMF
主搾乳期における最高流速 kg/分
8回の測定インターバルで計測した値 (22.4 秒)
■ HMG
最高流速 kg/分
1分間の平均流速の最大値
■ MG2
最初の2分の乳量
■ MG3
最初の3分の乳量
■ MG1
最初の1分の乳量
■ tHMF
搾乳開始からHMFを計測する までの時間
■ t400
流速400g/分から200g/分に低下するまでの時間。
■ BIMO
バイモダリティ (デュアルピーク) (0=no, 1=yes)
測定期間 = 流速0.50 kg/分 (tS500) から最初の96秒間
■ LE
流速停滞期または流速下降期におけるエア漏れの有無
0=認められない, 1=認められる
■ FlVor
装着の遅れ 0=認められない, 1=認められる
■ AbVor
早すぎる離脱 0=認められない, 1=認められる
【過搾乳期とマシンストリッピング期】
■ tMBG
過搾乳時間: 主搾乳期の終了からマシンストリッピング開始までの時間
(流速0.2 kg/分の状態である時間)
■ tMNG
マシンストリッピング時間: ストリッピングの開始から終了判定までの時間
開始判定=0.35kg/分以上の流速上昇
終了判定=流速が0.15kg/分以下まで下降
■ OS
マシンストリッピングの開始状態
0=主搾乳期の終了後 (0.2 kg/分)に開始
1=主搾乳期の終了前に開始
■ MFOS
マシンストリッピング開始時の流速, OS=1の場合のみ
■ tMBG2
マシンストリッピング終了から測定停止までの時間
■ MNG
マシンストリッピングの乳量
【電気伝導度】
■ ELAP
流速上昇期における電気伝導度の最大値
■ ELAD
流速上昇期の電気伝導度最大値と流速停滞期安定時の電気伝導度の差
■ ELHMF
ピーク流速時(HMF)の電気伝導度
■ ELMAX
流速上昇期を除く主搾乳期における電気伝導度の最大値
■ ELST
流速下降期における単位時間(45秒)平均電気伝導度の最大値と最小値の差
■ ELND
流速上昇期を除く主搾乳期における電気伝導度の最大値と最小値の差
■ ELMNG
主搾乳期以降(マシンストリッピング期)の電気伝導度の最大値
【その他の項目】
■ LS
泌乳コード: 乳牛・乾乳・育成牛・供卵牛・検定しない
■ AK
バッテリーの残量
■ Art
家畜品種
■ GNR
ラクトコーダのシリアル番号
■ MPL Nr
搾乳ポイント番号
■ MZ
搾乳:朝=M 夜=E
■ EM
期待乳量
■ NG
傾き(0=no; 1=30秒以上)
■ OS
流速200kg/分前の後搾り (0=no; 1=yes)
■ RM
洗浄の監視(0=no; 1=yes)
■ RV
洗浄工程の登録(0=no; 1=yes)
■ SM
失敗搾乳(0=no; 1=yes)
■ LE
エア漏れの有無(0=no; 1=yes)
■ Markn
マーカーの有無
■ tMark1
測定開始から最初のマーカーまでの時間
■ tMark2
測定開始から2番目のマーカーまでの時間
■ SPL
空気の含有率
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